お、そろそろはじまったな。父ちゃんは結核を煩い、肉体はもうすでに
腐っている。残る精神のみが部屋の片隅でうごめいているのが陽炎のよう
なゆらめきで判るのみだ。解体新書を読むんや、と、彼の思いはついに
果たされず寝台横に備えられたのは「退廃新書」なる同人文学書評で
あった。にしても、あのピエロピッチョーニ具合。成すものは成さん。